まず全体像
🗺約2時間の全体マップ
Cardano の毎朝の番組らしく、前半は雑談から入り、中盤で RealFi の本題、後半は SPO プログラムと Ben の“ビジョン論”へ。色分けは内容の“濃さ”の目安です。
開幕トーク:Xアプリ更新/Blockfrost 提案をめぐる論争雑談・ガバナンス
Xの新UIいじりから、「Blockfrost への資金提供を否決すべきか」というガバナンス論争へ。Phil が「代替があると言うが、では何が欠けるのか説明できるのか」と熱弁。
Ben 登場:IOG を離れて RealFi へ戦略
Ben O'Hanlon が5年半在籍した IOG を離れ、RealFi のコミュニティ立ち上げに参加した経緯。ステークプール運営者(SPO)にRFGトークンの一部を配る構想を John に持ち込んだ話。
John 登場:プロダクトの全体像コア
USDR・sUSDR・RFG の3トークン、資産の内訳(米国債・CLO ETF・直接レンディング)、そして「1ドルがどう流れるか」を Jenny の質問で丁寧に分解。
リスク・実績・地域アクセスコア
損失の順番(ロス・ウォーターフォール)、過去のデフォルト率2%・利回り16〜17%、監査と透明性ポータル。米国は直接ミント不可、ザンビア/カメルーンからのアクセス、金利は強制しない方針。
SPOアクセラレータ & マルチチェーン戦略
102 SPO が登録、Discord 700人超・検証済みウォレット600超。委任で1日100ポイント→RFG。Cardano を会計レイヤーに ETH からTVLを呼び込む設計。「なぜまた新しいステーブルコインか」も。
ロードマップ & Ben の“知能革命”論ビジョン
メインネットは約8週間後を目標。USDM との連携質問。最後に Ben が執筆中のエッセイ「知能革命は分散化される」を熱弁。番組ホスト Jenny の最終回でもあった。
TL;DR
⚡️3行まとめ
- プロダクト:米国債・CLO ETF で裏付けたステーブルコイン USDR。預けると sUSDR になり、一部が新興国フィンテックへの直接レンディングに回って利回りを生む。将来ガバナンストークン RFG を発行(12月ごろ)。
- 差別化:Circle/Tether は裏付け資産の利回りを発行者が総取り。RealFi は逆にほぼ全部を利用者に返す。さらに資本を「米国債で寝かせる」だけでなく実物経済で働かせることで、社会的インパクトも狙う。
- Cardano への意味:会計は Cardano 上で行い、Ethereum にもコントラクトを置いてETHの流動性を Cardano のTVLに引き込む。SPO(ステークプール)向けキャンペーンで委任者にRFGポイントを配り、ネットワークの分散化も後押し。メインネットは約8週間後を目標。
登場人物
👥この回の登壇者
ホスト2人+RealFiチーム2人を中心に、アフリカの起業家や他プロジェクトの担当者もマイクに上がりました。
まず前提
🏦RealFi とは何か
ひとことで言えば、「実物資産(RWA)で裏付けたステーブルコイン・インフラ」。カリブ海ケイマンのファンド/財団を器に、規制に準拠した“退屈でコンプライアントな”運用を目指すプロジェクトです。中心にいる John O'Connor は元IOGで「金融包摂(power to the edges)」を主導してきた人物。過去3〜4年、新興国のフィンテック向けレンディングを実際に手がけてきた実績をベースにしています。
🎯 コアの主張:資本を「働かせる」
普通のステーブルコインは、預かったドルを米国債で寝かせて利回りを発行者が総取りする。RealFi は「その資本を実物経済で productive(生産的)に働かせ、生まれた利回りを利用者に返す」ことを狙う。「ただ米政府の借入コストを下げているだけの資本を、意味のある場所へ」という思想。
プロダクトの中核
🪙3つのトークン:USDR / sUSDR / RFG
RealFi のプロダクトは3つのトークンで構成されます。「安定・流動性」から「利回り・インパクト」まで、役割がきれいに分かれています。
① USDR ── ステーブルコイン本体
1ドルに連動する普通のステーブルコイン。裏付けはできる限り流動性の高い資産――主に米国債(T-bills)と、深い取引市場のあるCLO ETF。
- ロックアップなし。いつでも USDC 等へ償還できるよう超・流動的な資産で裏付ける
- いわば「安全・すぐ出せる」レイヤー
② sUSDR ── ステーク版USDR(利回り)
USDR を「ステーク(=ロック)」すると受け取れるトークン。裏付けには流動資産に加えて新興国フィンテックへの直接レンディングが入り、利回りとインパクトを生む。
- DeFi で使えるファンジブルトークン。DEXで直接買うことも可能
- 解除(アンステーク)には1週間のクールダウン。その間に運用側が資産を流動的に組み替える
③ RFG ── ガバナンストークン
年内(12月ごろ)に発行予定のガバナンストークン。将来は提案・投票で方針を決める“意味のある一票”になる。
- USDR保有・流動性提供・テストネット参加などのインセンティブとして配布
- SPO(ステークプール運営者)にも配り、コミュニティに“持ち分”を持たせる
お金の流れ
💵1ドルの旅:入金から利回りが戻るまで
Jenny の「1ドルが USDR になり、ステークされ、実物資産に届き、収益を生んで、ユーザーに戻るまでを追ってほしい」というリクエストに John が答えた、いちばん分かりやすいパートです。
手元に来た 100 USDC を、(保有比率で変動するが)ざっくり次のように配分する例:
※ John が挙げた“例としての”配分。実際の比率は USDR と sUSDR の保有バランスで変わる。
- $20:Ondo などのトークン化米国債(T-bill)を購入
- $50:Janus Henderson などのトークン化CLO ETF(投資適格・AAA・流動性高)を購入
- $30:オフランプしてフィンテック企業へ直接レンディング。融資契約(クレジット・アグリーメント)を結ぶ
- フィンテックが実体経済へ又貸し(中小企業の運転資金など)
- 元本+利息が返済され財団に戻る → 増えたNAV(純資産)分だけ USDR を追加ミント
- その価値をsUSDR 保有者のポケットに返す(利回りとして分配)
リスク設計
🌊損失の順番(ロス・ウォーターフォール)
Maureen の「新興国の信用ショックや通貨危機が起きたら?」という鋭い質問への回答。「誰が先に、誰が最後に損をするか」を明確にした設計です。上から順に損失を吸収します。
いま調達中の資本。他の誰よりも先にここが損を被り、全員のクッションになる。「まだ closing 中だが、これが皆に安心を与える」と John。
プロトコル自身の収益から積み上がる小さな“保険ポット”。2番目に損失を吸収する。
大きな損失が出た場合、次に影響を受けるのは利回りを取りに行っているステーク層。
最も保護される。普通のステーブルコインとして最後に損失が及ぶ層。
🛡 もう一段の“防御線”:フィンテックのバランスシート
直接レンディングは「RealFiファンド ↔ フィンテック」の契約。そのフィンテックが自己資本(エクイティ)を持つ事業体であることが鍵。個々のローンが多少焦げついても、返済義務を負うのはフィンテック本体なので、「与信の審査(アンダーライティング)は、ローンだけでなくフィンテック企業そのものに対して行う」。だから「信用簿が最高でも、企業として十分な自己資本がなければ貸さない」。
実績と検証
📊過去の実績と、透明性の担保
「過去のデフォルトは実際どうだったか」「誰が検証するのか」という質問への回答。数字はいずれも RealFi 側の説明にもとづきます。
「本当に資産があるのか」をどう検証するか
- トークン化資産:資産の多く(トークン化T-bill、トークン化CLO ETF)はオンチェーンで確認できる
- ファンド監査人:オンチェーンでない直接レンディング分は、ケイマンの帳簿を見るファンド監査人が毎月NAVを公表。数十万のファンドを扱う規制された機能
- 年次の財務監査:年末に財務監査人が全てをチェックし監査報告書を公表
- 透明性ポータル:すべての資産を掲載し、誰でも独立にリスクをモデル化できるようにする
- デフォルト率も公開:月次レポートはトークン保有者だけでなく全員に公開する方針(ただし個々のローン明細までは出さない=情報過多になるため)
誰が使えるのか
🌍米国の制約と、新興国からのアクセス
🇺🇸 米国:直接ミントは不可
米国居住者は直接 USDR をミントできない。ただしこれは Circle(USDC)や Athena と同じ構図で、DApp自体が使えないわけではない。
- Circle も、KYC済みの機関顧客でなければ直接ミント/償還できない
- だが Coinbase や DEX 経由なら入手できる ── USDR も同様にSundaeSwap や Minswap で購入可能
- 先例:GED(Djed)も米国から公式アプリは使えないが、コントラクトに直接触る「OpenGED」で回避できた
🌍 新興国:入り口(オンランプ)が課題
カメルーンは対象内。だが「どうやって現地通貨から暗号資産を手に入れるか」がボトルネック、という KB(ザンビア)や Jim(カメルーン)の実感。
- 「銀行は難しく、モバイルマネーはあるが、結局 WhatsApp で暗号資産を持つ人から買う」のが現実
- John:「モバイルマネー→アプリ→USDR を一気に束ねる体験はいずれ作れる。ただ“将来のプロダクト”カテゴリ」
- まずはメインネット立ち上げと RealFi の需要づくりから。国別のユーザビリティ拡張は今後
金利は「強制しない」── KB(ザンビアの養蜂家)への回答
「フィンテックに金利を下げさせる仕組みはあるのか?アフリカは金利が非常に高い」という問いに、John は「金利はコントロールしない。それが良いことだ」と回答。資本提供者が事業の運営方法に“お触れ”を出すと物事が壊れる、という考え方です。代わりに――
コミュニティ設計
🛡SPO アクセラレータ・プログラム
Ben が IOG を離れて最初に持ち込んだ構想。ステークプール運営者(SPO)を起点にコミュニティを立ち上げ、Cardano の分散化を後押しする狙いです。
仕組み:三方向の“ギブ&ゲット”
委任者(デリゲーター)
対象SPOに委任すると1日100ポイントを受動的に獲得。Discordでのテストネット参加でも加算。ポイントは後でRFGトークンに変換。
元本リスクなし:ADAは自分のウォレットに残ったまま、通常のステーク報酬に“上乗せ”でRFGがもらえる。
SPO運営者
ステークは“粘着的”で集めにくい。RFGトークンと将来のガバナンス参加を「委任の動機」として提示でき、他プールと差別化できる。
最初の10人がクエスト完了で各10 USDR。10人の委任者がクエスト達成なら運営者に$100+パーカー+スワッグ+Discordロール。
💡 “バニティ指標”ではなく、オンチェーンで検証できる活動
Ben が過去に批判してきた「アウトプットだけ報酬を出すアンバサダー制度」との違いは、すべてオンチェーンで検証可能な点。誰がどのプールに委任し、ポイントを請求し、クエストを完了したかを追える。メインネット時に「どのSPOが本当に貢献したか」を John やマーケティングチームに示せる。
流動性戦略
🔗マルチチェーン:ETHの流動性を Cardano のTVLへ
「Cardano の TVL をどう伸ばすか」という“鶏と卵”問題への、RealFi なりの答え。
- ユーザー体験:MetaMask(ETH)でも Lace(Cardano)でも、同じように DApp に接続して使える
- 肝:ETHメインネット側の需要・取引量が生まれても、資産と会計は Cardano 上にある → TVL は Cardano に積み上がる
- 「ETHには既に大量の流動性と需要がある。そこから数億ドル規模のTVLを Cardano に呼び込める可能性」(John)
- 将来的には Solana など他エコシステムへの拡張も視野
素朴な疑問
❓なぜ“また”別のステーブルコインを作るのか
Jonah の直球質問への John の回答。要は「うまくいく仕組みは真似る。だが経済モデルを反転させる」。
| 観点 | Circle / Tether | RealFi(USDR) |
|---|---|---|
| 利回りの取り分 | 発行者が総取り | 利用者がほぼ全部を得る |
| 裏付け資産の使い道 | 米国債で寝かせる (=米政府の借入コストを下げるだけ) | 米国債+CLO ETF+実物経済への融資 |
| ビジネスモデル | 約100人で Goldman Sachs 並みの利益 (=変える動機がない) | 利回りを利用者に返して参入余地を作る |
| 狙う社会的効果 | 特になし | 新興国の雇用・事業成長にインパクト |
利回り付き担保(yield-bearing collateral)という新しい使い道
John が挙げたもう一つの魅力は、トレーディングでの応用。ドルを担保に置く代わりに利回りの付く担保・値上がりする担保を置ければ、これまで成立しなかった取引が成立する。「担保に8%付いていたら、トレード目線でかなりエキサイティング」。さらに貯蓄目線でも――「僕の NatWest(英銀行)口座は1%くらい。ドル建てで安定した利回りが付く商品の利点は大きい」。
🍯 Goldfinch との対比(なぜフィンテック経由なのか)
John は、破綻した Goldfinch を引き合いに出しました。「Goldfinch は、貸付先を審査するアンダーライティングを“一般のボランティア”に任せていた(トークンで動機づけ)。でも、ボランティアが運用・審査するファンドに自分の金は預けないだろう」。RealFi は代わりに自己資本を持つプロのフィンテックを審査することで、TradFi の強みを取り込みつつ、暗号資産に“働く安定通貨”を持ち込む、という立て付けです。
これから
🗓ロードマップ:メインネットは約8週間後
資産の買い付け、トレーディング基盤の整備、需要規模($10M / $100M / $10億)別のスケール戦略づくり。「Athena は4〜5か月で約$20億のTVLに育った。どこまで成功するかは分からないが、需要に応じた戦略が要る」。
Cardano 側のスマートコントラクトは監査済み。並行して EVM メインネット契約を鋭意開発中。契約面では Sunday の Pi、元Cardano/IOG CPO の Danel、そして Phil らの協力。
どのキュレーター/セクターが RealFi と組むか、ステーブルコインを大量に持つ“クリプト・アロケーター”へのピッチなど。法務・資産・GTM を整えて強いローンチを狙う。
USDM との連携は「月曜から検討」
USDM(Cardano 生まれのステーブルコイン)の BDリード BlockJock から「USDR を使って USDM をミントできる道はあるか?」という質問。John は「まさに月曜からリストに入れて検討し始めるところ。数日早いけど、一緒にやれる方法を考えたい」と前向きに回答しました。
冒頭の雑談から
🏛おまけ:Blockfrost をめぐるガバナンス論争
本題の前、開幕の雑談で盛り上がったのがこのテーマ。Cardano ガバナンスの“今”がよく分かるやり取りでした。
- Phil の主張:Cardano には Ethereum のような「無料RPC/インデクサ」の公共インフラが欠けている。新規開発者が「DBSyncを入れて60時間同期」を強いられたら、そのまま去ってしまう
- Maureen の懸念:提案の資金配分(人件費が8割以上、残りがインフラ)が不透明で、DRep として賛成しづらかった
- Phil の返し:だからこそ「二者択一」でなく交渉に持ち込むべき。「アイデアは良いが、この点の明確化を」「価格の交渉を」と条件を出すのが良い DRep のあり方
- Ben の視点:「財務(トレジャリー)はどのみち使われる ── 価値が相対的に減るか、投票で使われるか。もっと積極的(aggressive)かつ実務的(pragmatic)に、専門家を交えて商業・マーケの課題を解くべき」
締めの熱弁
💡Ben の“ビジョン論”:知能革命は分散化される
スペースの最後、Ben O'Hanlon が執筆中のエッセイ(サブスタックの5部構成シリーズ/e-zine)「The Intelligence Revolution Will Be Decentralized」を30秒(実際は30分…)で語りました。RealFi そのものではありませんが、彼が Cardano に戻ってきた“動機”がよく表れています。
前提:お金=協調技術
20世紀に貨幣システムは“捕捉”された。金融の主権は個人・企業・国家の本当の主権の一部。そして21世紀の協調技術はAIであり、放っておけば同じように捕捉される、という対称性。
3つの公理
①技術は変化のエージェント(印刷機など)②技術は協調の導管(蒸気&印刷が啓蒙主義を可能に)③技術はエコロジー=道具であるだけでなく、僕らを変える環境でもある。
第二の啓蒙=経済的啓蒙
第一の啓蒙が「統治(man's ability to determine his fate)」なら、暗号資産は「経済的主権を自分で決める条件」=第二の啓蒙。革命がまだ来ていないように見えるのは、歴史の“どの地点”にいるかの問題にすぎない。
結論:シェリング・ポイント
中国がオープンウェイトのモデルを公開し、米国の“支配システム”を切り崩す ── 貨幣システムでやったのと同じ構図。ゆえにオープンソース/オープンウェイト/分散化という反革命は不可避、というのが Ben のピッチ。
用語集
📚この回に出てきた用語
USDR / sUSDR / RFG
RealFi の3トークン。USDR=1ドル連動のステーブルコイン、sUSDR=USDRを預けて利回りを得るステーク版、RFG=ガバナンストークン(12月ごろ発行予定)。
RWA(実物資産)
Real World Assets。国債・社債・不動産・ローンなど、現実世界の資産をトークン化してオンチェーンに持ち込むこと。RealFi の中核テーマ。
CLO ETF
企業向けローンを束ねて証券化した CLO を集めたETF。ここでは投資適格・AAA格・流動性が高いものを、流動性クッションとして保有。
T-bill(米国債)
米国短期国債。最も安全・流動的な資産の代表。Ondo などがトークン化して提供している。
NAV(純資産価値)
Net Asset Value。ファンドが保有する資産の時価総額。ファンド監査人が毎月算定・公表することで資産の実在を検証する。
ロス・ウォーターフォール
損失が出たときに「誰から先に損をするか」の順序。第一損失層→プロトコル・バッファ→sUSDR→USDR の順(図解)。
アンダーライティング(与信審査)
貸付先の信用力を評価する作業。RealFi は個々のローンだけでなくフィンテック企業そのものを審査する。
SPO
Stake Pool Operator。Cardano のステークプール運営者。RealFi アクセラレータの起点となるコミュニティ層。
DRep
Delegated Representative。投票権を委任されて代理投票する、Cardano ガバナンスの役割。
Blockfrost
Cardano アプリが使う共有インフラ(RPC/インデクサ)。冒頭の資金提供論争のテーマ。
DFI
Development Finance Institution(開発金融機関)。新興国レンディングに最初に資本を入れてきた主体。RealFi は民間資本でここを補完・代替したい。
USDM
Cardano 生まれのステーブルコイン。BDリードの BlockJock が「USDR と連携できるか」を質問。
一次情報
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